林:「文藝春秋」のコラムにも書いてらっしゃいましたけど、2019年の大晦日は韓国の釜山にいらしてたんですよね。
松重:ああ、食べる番組(ドラマ「孤独のグルメ」)ですね。19年の年末から20年の1月にかけて、台湾と韓国と中国を行ったり来たりしてたんです。ありがたいことに、あのドラマが韓国や中国ですごく人気があって、そこでお仕事をもらえる機会が多いんです。
林:そうなんですか。日韓問題もいろいろありますけど、食べることに関しては韓国の人もみんな笑顔で、日本人が食べてるのを見てるんでしょうね。食に関しては万国共通なんだよなと、あらためて考えながら見ちゃいました。
松重:食べるっていう行為に関しては、国境を軽く越えられるんだなと思いましたね。
林:「孤独のグルメ」は、あちらでも人気なんですね。
松重:人気ですよ。台湾ではリメイクで向こうの俳優さんがやられてますし。
林:へぇ~。主人公の井之頭五郎さん、お酒が飲めないところがいいですよね。お酒を飲むと、また展開が違ってきちゃいますけど。
松重:ハハハ。そうなんですよね。
林:そしてまた、食べ方がきれいなんですよね。おいしそうに残さずきれいに召し上がるんで、見ていて気持ちがいいですよ。「こういう食べ方もイケるぞ」とか言って、ソースの中にご飯を入れちゃったり、お行儀の悪い食べ方をするときもあるけど、残さずきれいに召し上がるんですよね。
松重:パスタとか麺類は音を立てないで食べろって言いますけど、やっぱり音を立ててすすりたくなるんですよね。行儀に関しては申し訳ない部分もあるんですけど、僕、普通の日本人として生きてきてるんで、自分が「これじゃないとおいしいという感情が立ち上がらない」と思う部分は正直にやってます。
林:ほんとに毎回おいしそうです。ところで、昨年初めてお出しになった『空洞のなかみ』という短編小説とエッセーが収録された本ですけど、ショートショートがおもしろくて。でも、松重さんって主役や準主役の位置にいらっしゃるのに、みんなと一緒にロケバスに乗せられたりして、これって何年前の話かなって皆さん思うんじゃないですか。