めぐみ在宅クリニック(横浜市)院長で、一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会(*2)代表理事の小澤竹俊医師は、こうアドバイスする。
「特に、人生の最期の時期をどうするかについては、周囲がどれだけ情報を集めて選んでも後悔するものです。でも、みんなで悩み、みんなで決めた選択は、どれを選んでも後悔が少なくなりやすい。人生会議には、そういう効果があります」
大城さんも助言する。
「たいていのご家族は看取りの経験がないため、病状の悪化に不安や恐怖を感じます。その状況で患者さんの治療や療養場所などの選択を迫られ、短時間で決めなければなりません。一方、人生会議を経ていれば、『この人は、こう考える』と推測できるだけでなく、周囲と不安や恐怖を共有することもできます」
つまり、人生会議とは人生の最期の時期というもっとも大切な日常生活に、本人の希望や尊厳を組み込む終活だ。
人生会議は、どのように進めていけばいいか。
国立長寿医療研究センター病院緩和ケア診療部の西川満則医師は「人生会議は四つのステップで考えるといいですよ」と言う。西川医師と前出の大城さんはACPの普及啓発に力を入れて「ACPiece」研修会を重ねている。
(1)意思形成=人生の中で自分にとって大切なこと、譲れないこと、こうしたい、こうしてほしいという希望など、頭の中でモヤモヤ感じていることを言葉にする。
(2)意思表明=(1)を誰かに伝えること。書きとめておくのもよい。
この意思表明について、社会では「人工呼吸器や胃ろうなどの延命治療を受けたいか」など医療についての希望を伝えることに限定した誤解が広がっている。それはほんの一部に過ぎない。
実は、人生会議の議論は、当初、「死期が間近に迫った患者の生命を維持する治療(人工呼吸器や胃ろうなど)を続けるか、中止するかを、どのように決めればいいか」から始まった。患者本人の意思や尊厳、権利を擁護するためだ。