6日の昼下がり。市民有志が東京・渋谷のハチ公像の前に集まって、具志堅さんのメッセージをつなぎ、行き交う人々に「連帯」を呼び掛けた。春の陽気に包まれ、誰もがマスクをしていること以外は、にぎわいも人出の多さもコロナ前と変わらない印象だ。

「さすがにバテテいます。それでもラストスパートだと思って気力を振り絞って頑張っております」

 地面に設置された大きなスピーカーを通して流れる具志堅さんの声は最初、消え入りそうにか細く聞こえた。しかし、具志堅さんは話すほどに言葉に熱を帯び、淡々と憤りを募らせていくのが伝わった。

「沖縄ではハンガーストライキを通して多くの方々に伝わっていますが、本土の方々にはまだご遺族に周知するには至っていないのではないかと心配しています」

 だが徐々に、具志堅さんの声は周波数の合わないラジオを聴いているように、渋谷のあらゆる喧騒の渦にのまれ、浮かんでは消えた。

「絶対にやめてほしい……信じられない国の暴挙……裏切り……糾弾」

 私自身、具志堅さんの思いにどう応えていいのかわからない。記事を一本書いたところで、どうせ何も変わらない、変えられない、という気持ちが働いたのも事実だ。しかし、「届かない」のではなく、「届けていない」だけなのではないか、とも思った。今回もまた、黙殺していいはずがない。だからできることはやる。それでも、後ろ暗い思いは消えない。

(文/編集部・渡辺 豪)

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