2011年3月11日の東日本大震災から10年。あらためて、原子力発電所存続の是非を問い直す機会にしたい。
原発で一番大事なことは、安全性だ。技術的安全性の問題と、管理運営する電力会社と規制をする政府が信頼できるかという二つの問題がある。私はいずれの観点から見ても原発はすぐに止めるべきだと考えている。
まず、安全性の視点から誰にでもわかる議論を紹介しよう。
関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止め判決と同高浜原発3・4号機の再稼働差し止め仮処分決定を出した樋口英明元判事はこう述べる。(1)原発事故のもたらす被害は極めて甚大。(2)それ故に原発には高度の安全性が求められる。(3)地震大国日本において原発に高度の安全性があるということは、原発に高度の耐震性があるということに他ならない。(4)わが国の原発の耐震性は極めて低い。(5)よって、原発の運転は許されない(樋口英明『私が原発を止めた理由』<旬報社>)。(1)から(3)に異論は出ない。問題は(4)原発の耐震性だ。
2月13日に福島県沖で発生した地震の最大加速度は宮城県山元町の1432ガルだった。「ガル」は、地震の強さを測る単位で、原発の耐震設計基準に用いられる。10年前の東日本大震災の最大の揺れは2933ガル。21世紀に入って最大の揺れは、08年岩手・宮城内陸地震の4022ガルだ。18年北海道胆振東部地震や16年熊本地震は1700台である。21世紀の1千ガル以上の地震は18回。かなりの頻度だ。
原発の耐震設計基準はといえば、大飯原発が設計時に405ガル。後に856ガルまで大丈夫だとされたが、他の原発もおおむね1千以下だ。一方、三井ホームが売り物にする耐震基準は5115ガル、住友林業は3406ガルだ。民間で「地震に強い」と言うにはそのレベルが必要なのだ。
これについて、電力会社は、「原発の敷地に限って、それほど大きな地震は来ない」と言うが、根拠を聞くと、コンピューターによる計算だという。こんな話を信じるのはよほどのお人好しだけだ。