「それでも従っていただけない場合は、45条3項の『命令』に切り換えることになってきますが、現状は全て『要請』までで、『命令』までいった店はないです。行政法上、『命令』に従わないと過料を科すということが定められていて、それにのっとってやっている。緊急事態宣言下であれば『30万円以下の過料』、蔓延防止等重点処置下であれば『20万円以下の過料』を科すことになります」(同)

 東京都総務局総合防災部の担当者によれば、これまでのところ、「都内では過料の対象となった飲食店はまだ一件もありません」ということだった。

 一方で、店舗の規模にかかわらず1日6万円が支給されるため、思わぬ「バブル」状態の店も。都内で7~8席の小さなバーを経営する女性が話す。

「従業員がおらず、土地も店も所有しているので時短営業しても損害がない。今年の1~2月で360万円くらいの協力金が入ってきて、売り上げに計上されそうなので、来年の税金対策に店内の改装を予定しています」

 また、千葉県内で小規模な飲食店を経営する男性は、

「店を閉めているんですが、こんなに利益が出たことがない。今後のためにももらえる時にもらっておきたい」

 と言う。こうした現状に、ある銀座のクラブの経営者はこう憤る。

「1日6万円でもうけている方がたくさんいますよね。店主が自宅でやっている居酒屋とかバー、個人営業のラーメン店、もともと午後9時で閉まっていたお寿司屋……1日の売上が1万円くらいしかなかった店にも6万円の協力金ですからね。あまりにも不公平な政策を誰が決めているんでしょうか」

 こうした歪みを放置していて、コロナを克服できるのだろうか。

(本誌・上田耕司、西岡千史)

※週刊朝日3.19号の記事に加筆

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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