これがきっかけとなり、翌14年1月、募集があったTeam8のオーディションを受け、見事合格した。

「人生って不思議なものです」

 舞木さんが所属した「Team8」は、全国の都道府県から1人ずつ代表が選ばれた。14年4月から活動をスタートさせ、第1期・福島県代表である舞木さんは、週末の劇場公演に合わせて自宅と東京を往復するようになった。

「公演や握手会とともに、大切にしていたのは『誰かのために』の活動です。私がAKBを目指すきっかけになった被災地訪問を、今度は私がする立場になったのです」

 その年の9月の福島県いわき市を手始めに、卒業するまでに訪問したのは全部で5回。その中には、地元もあった。

「仲のいい友だちや知人も見にきてくれて、恥ずかしさもあったけど、本当にうれしかったです。ファンの方だけではなく、小さな子どもたちやお年寄りからも『来てくれてありがとう』『一緒に頑張ろうね』『応援してるよ』と声をかけていただき、私が元気をいっぱいもらってたような気がします。今でも被災地訪問のことはよく覚えていて、新鮮な感じです。アイドルになれて良かったと思いました」

 AKB48には復興応援ソングが二つある。11年にリリースされた「風は吹いている」と、13年に無料配信開始の「掌(てのひら)が語ること」だ。舞木さんは、「風は吹いている」が特に好きだと言う。

「両方ともメッセージ性の強い曲なんですが、『風は』は最初のメロディーから重みがあってジーンとくる始まりなんですよ。詞も絶望からの再起、明日に向かってがんばろう、という内容です。Team8にいたころは、レッスンも含めると数え切れないほど歌って踊りましたから、今も体に染みついています」

 東京暮らしが長くなり、卒業後の19年11月にTeam8の仲間だった谷川聖さんとファッションブランド『Emma(エマ)』を立ち上げたため、福島に帰ることはめっきり少なくなった。

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福島に寄り添う気持ち、変わりない