「アナフィラキシーはほかのワクチンや治療薬でも起こりえる副反応で、コロナワクチンで起こる頻度は、抗菌薬のペニシリンと変わりません。接種後の待機中によく観察して、発症したら速やかにエピネフリンという治療薬を注射すれば、大事に至る心配はありません」
とはいえ、mRNAワクチンは世界初だけに、長期的な健康問題を危惧する声も。この点について、谷口医師はこう話す。
「mRNAワクチンは10年以上の研究からできたワクチンです。mRNAは体内に入ると速やかに分解され細胞核の中に入り込むことはないので、理論的にはヒトの遺伝子に影響を及ぼしません。長期で何かが起こるリスクは低いと考えています」
■高齢者や妊婦への接種は?
先行接種に続き、来月から高齢者への接種が始まる予定だ。
まず後期高齢者にあたる80~90代以降の高齢者。海外の臨床試験ではその年代の被験者の数が少なかったため、検討したほうがいいという意見もある。
政府の新型コロナウイルス対策分科会メンバーで、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「健康状態がよければ接種できるでしょう。むしろコロナによる重症化を予防するメリットが大きい」と話す。
宮坂医師も高齢者への接種を推奨する。今までのワクチンは高齢者には免疫がつきにくかったが、コロナワクチンではその常識をくつがえす結果が出ているためだ。
一方で慎重になったほうがいいのは、フレイルなどで体力が著しく落ちている人、寝たきりの人たち。
「高齢者施設などでは、こうした高齢者よりもむしろ、ウイルスを持ち込む可能性が高い介護職員や看護師が先に接種すべきでしょう」(宮坂医師)
妊婦の場合はどうか。岡部所長が言う。
「mRNAワクチンは生ワクチンのように胎児に影響を与えるようなことはないとされています。また、臨床試験や一般接種のなかで妊娠していることに気付かず接種を受けた、あるいは接種後まもなく妊娠した女性もおられます。そういう女性もフォローされていますが、今のところ問題は起きていません。ただし、積極的に妊娠中に接種を推奨する段階ではありません」
岡医師も、まだ接種は控えたほうがいいかもしれないと考える。
「特に、妊娠初期や不妊治療を行っている女性は待ったほうがいいでしょう。妊娠早期は自然に流産することも少なくありません。ワクチンが安全だとしても、その時期に接種するのは、リスクが大きいです」
■ワクチンはいつ届く?
日本では、ファイザーから1億4400万回分、モデルナから5千万回分、アストラゼネカから1億2千万回分、計3億1400万回分(1億5700万人分)の供給を受ける予定だが、いつまでに、どれくらいの量が確保できるかは不透明だ。
現場でも、ワクチンがいつ届くかの情報が入ってこなかったという。