クロエ・ジャオ/1982年、中国・北京生まれ。ニューヨーク大学で映画作りを学ぶ。「Songs My Brothers Taught Me」(2015年・原題)で長編デビュー。続く長編第2作「ザ・ライダー」(17年)はカンヌ国際映画祭監督週間でプレミア上映され、アート・シネマ賞を獲得した。本作は第78回ゴールデン・グローブ賞で作品賞と監督賞を受賞。待機作にマーベル・スタジオの「エターナルズ」(原題)がある(写真:Jake Sigl)
クロエ・ジャオ/1982年、中国・北京生まれ。ニューヨーク大学で映画作りを学ぶ。「Songs My Brothers Taught Me」(2015年・原題)で長編デビュー。続く長編第2作「ザ・ライダー」(17年)はカンヌ国際映画祭監督週間でプレミア上映され、アート・シネマ賞を獲得した。本作は第78回ゴールデン・グローブ賞で作品賞と監督賞を受賞。待機作にマーベル・スタジオの「エターナルズ」(原題)がある(写真:Jake Sigl)
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「ノマドランド」/アメリカの大自然を背景に、移動する先々で出会うノマドたちとの心の交流が描かれる。3月26日公開 (c)2020 20th Century Studios. All rights reserved.
「ノマドランド」/アメリカの大自然を背景に、移動する先々で出会うノマドたちとの心の交流が描かれる。3月26日公開 (c)2020 20th Century Studios. All rights reserved.
「ゲット・アウト」/発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント、価格1429円+税/DVD発売中 (c)2018 Universal Studios. All Rights Reserved.
「ゲット・アウト」/発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント、価格1429円+税/DVD発売中 (c)2018 Universal Studios. All Rights Reserved.

 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

【映画「ノマドランド」の場面カットはこちら】

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 もしかして、これはドキュメンタリーなのか。「ノマドランド」を観た人は、たびたびそんな錯覚に陥るはずだ。

 答えは、イエスでもあり、ノーでもある。プロの俳優ではない一般人を起用し、その人たちをリアルに、自然にとらえていくのは、クロエ・ジャオ監督(38)が過去2作でもやってみせたことだ。彼女のそんな個性と感性に魅せられたから、原作のノンフィクション本の権利を取得したフランシス・マクドーマンド(63)は、ジャオに声をかけたのだ。

 タイトルにある“ノマド”は、家を持たず、仕事のある場所へ移動しながら車で生活をする、現代の遊牧民を指す。この映画には本物のノマドたちが多数出演している。

「フランシスからメールをもらって原作本のタイトルを見た時、この役が務まるのは彼女しかいないだろうと思いました。まだ本を読んでいなかったのに、そう確信したんですよ。役の準備のため、フランシスはノマドと一緒に生活をし、溶け込んでくれました。彼らに心を開いてもらうにはそれしかないんです」

 夫に先立たれ、勤めた会社も閉鎖してしまった時、ファーン(マクドーマンド)は、長く住んだ街を後にし、キャンピングカーに乗って、新たな人生への一歩を踏み出す。アマゾンの配送センターなど、仕事を渡り歩く中では、しばらくしてまた同じ顔に出会うこともある。そんな彼らから、ジャオは貴重なことを学んだと振り返る。

「ひとつの映画の撮影が終わって家に帰る時、この人たちにもう会えないんだと思うと、悲しくなっていつも泣いてしまうんです。でも、この映画に出てくるある男性が、だから自分はこの生き方が好きなんだと言うのを聞いて、はっとしました。きっとまたどこかで会えるから、本当のさようならはないんだと、彼は言ったのです。そう聞いて、別れをつらく感じてもいいのだと気づき、心が癒やされました」

 ノマドたちは圧倒的に白人で、彼らが住むのは保守派が強い土地柄。そのため、「意図的にトランプ支持者たちの人間味を描いている」という、うがった見方もできなくはない。だが、この映画に政治的メッセージはないとジャオは主張する。それはサウスダコタで長編デビュー作を撮った時から貫いてきた姿勢だ。

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