漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「青天を衝け」(NHK総合 日曜20:00~ほか)をウォッチした。
【画像】こんなに「こんばんは」が似合う人はいない!?大河ドラマ「青天を衝け」のイラストはこちら
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「こんばんは、徳川家康(北大路欣也)です」
渋沢栄一(吉沢亮)の生涯を描く大河ドラマ。いきなり家康の出オチで始まった。
家康の背後には、室町から令和まで連なる年表。「2020年コロナ禍で東京オリ……(ンピックが延期。たぶん)」まで読める。ノリノリで「大ピンチ」だの「タイミング」だの今どきフレーズをブッ込んでくるこの家康は、幕末から現代への橋渡し役だ。
何かと複雑な幕末から明治時代、一般的にあまり知られていない渋沢という主人公。「大丈夫? みんなついてきてる?」というNHKの必死さがひしひしと伝わる。
家康が引っ込んでドラマパートが始まれば、守本奈実アナによるナレーションがあれもこれも全力で説明してくれる。
「武蔵国、血洗島(ちあらいじま)」。うん、字幕も出てるけどね。
「この地の大事な収入源となっていたのは、衣類を青い色に染めるための藍作りです」
こういうのはドラマ内のセリフで説明するの面倒だしね。
「息子の栄一は人一倍わんぱくで、人一倍おしゃべりでした」。いや、それはエピソードで伝えて。
「栄一といとこの喜作は広い畑を朝から晩まで駆け回って遊びました」
見ればわかる。
「上様とは、江戸幕府第12代将軍・徳川家慶です」。子供か、視聴者は赤ちゃんか。はーい上様でちゅよ~か。
もう手取り足取り、至れり尽くせり。これ、ひょっとして大河ドラマじゃなくて「歴史秘話ヒストリア」じゃない? 歴史バラエティー内のものすごく豪華な再現ドラマなんじゃない?
とにかく全方向説明型だった物語の発端。5話あたりでナレーションもやや収まり、主人公栄一と共に描かれる一橋慶喜(草なぎ剛)、2人のドラマが動きだした。
そして要所要所で何かと栄一が平伏し、キッと顔を上げる。そこで顔のアップどーん。この吉沢亮の顔面力。この目ヂカラで今後押していく気満々ですよね。
ひとつ気になるのは、長命で91歳まで生きた栄一の人生を、どこまで描くのかというところ。若い吉沢が晩年を演じるにはちょっと無理がある。
終盤にかかったある日、「こんばんは、今日から私が渋沢栄一です」って、家康が言い出すんじゃないかドキドキ。
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
※週刊朝日 2021年4月2日号