マスクが日常化してから、相手の声がこもっていて聞き返す機会が増えてはいないだろうか。人によっては口の動きが隠れて見えないことによって聞こえにくさを感じることも。コロナ禍で耳の聞こえに不安を抱き、補聴器の相談に訪れる人が増えている。
【画像】マスク有り、無しで聞こえにくさを検証・視覚化した結果がこちら
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最初の相談客が訪れたのは昨年10月だった。「相手がマスクを着けていると、声がよく聞こえない」――夏の盛りも過ぎ、外でも誰もがマスクを着けるようになった頃だ。補聴器販売店・西部補聴器(東京都福生市)の店長、北村美恵子さんはこう話す。
「マスクで相手の口元が見えなくなってしまい、言葉を判別するのが難しくなってしまったという人がとても増えています。また物理的にも、マスクをすると音がさえぎられて声が届きにくくなります。そうすると、遠くにあるテレビのように、音の距離を感じてしまう。難聴の人に限って言えば、ほとんどの人が困っているといっても過言ではないと思います」
北村さんはコロナ禍以降、20~30人から「マスクでよく聞こえない」という相談を受けた。相談者の中には、これまで補聴器は使用していなかったが、聞こえにくくなって「もしかして難聴なのでは」と思い、補聴器を必要とするケースもあった。
「仕事をされている人が多いかもしれません。軽い難聴の人は、ちょっと周りが騒がしいと聞こえにくいけれど、相手の口元を見たり、ちょっと大きめの声で話してもらったり工夫をすることで会話ができます。けれどもマスクをするようになってから、仕事に支障をきたしているという人も増えてきました」
ある50代の女性は、事務の仕事で窓口業務をしていた。もともと耳が聞こえにくくなっているという自覚はあった。家族からも「聞こえていないんじゃない?」と指摘をされることはあったが、そこまで困ってはいなかった。補聴器も使用していなかった。
ところがコロナ禍以降、窓口ではビニールシートやアクリル板を設置するようになった。客はマスクを着けているため口の動きも確認できず、とたんに声が聞きとりにくくなってしまった。最終的には補聴器を着けて、困っていた状況が改善されたという。