「彼女たちは、稼いだお金を自分のためじゃなく、子どもの教育費や家族、コミュニティーのために使っていた。女性の雇用を生み出せばお金が循環するが、国さえも変えられると思えた」
18年の起業家精神に関する調査(GEM調査)によると、アフリカの起業件数は世界トップレベルで5カ国が10位以内だ。経済成長を遂げてはいるものの、貧困問題は一向に解決しない。世界銀行によると、アフリカではその全人口の約40%が貧困層で、農村部などの地方にいたっては80%を超える。続いた内戦で男性を主とした成人層が死亡したため、多くが「大人がいない国」なのだ。例えばウガンダなら18歳以下が人口4500万の半分を占める。子どもをまっとうに育てることが国力につながると考えれば、現時点で子育てを担っている女性への支援はマストだ。
布を使って何を作るべきか。洋服はサイズ展開が必要で季節サイクルもあり在庫管理が難しい。この問題をクリアするため、製造アイテムはバッグに決めた。
次に、布を縫い合わせてバッグを作る人を探し始めた。最初に現地法人の仲間に紹介してもらったシングルマザーのグレースは、たったひとりで4人の子どもを育てていた。うちひとりは、HIV感染で亡くなった姉の子だ。グレースは「子どもたち全員を学校に通わせたい」と訴えた。学校は3学期制のため学期ごとに授業料を払うそうで、「お金が払えないと、次の学期は子どもが学校に行けなくなる」と顔をゆがめた。収入源は週に1度の清掃の仕事だけで「私がちゃんとした教育を受けてこなかったからだ」と自分を責めた。
「彼女が悪いわけでなく、社会構造の問題なのに。話を聴いていて本当につらかった」
貧困のリアルを目の当たりにした仲本は、グレースを仲間に招き入れた。ただし、単なる同情からではない。それには理由があった。
彼女の家に通されると、中に鶏が10羽いた。理由を尋ねると「卵を産むし、クリスマスには高く売れる」。庭には豚がいた。豚は高価で1頭育てると、1学期分の学費になる。餌は残飯で済み、1頭の雌は一度の出産で8~10匹産むという。