社会起業家、仲本千津。東京・代官山にある「RICCI EVERYDAY(リッチー エブリデイ)」には、カラフルなアフリカンプリントで作られたバッグが並ぶ。これらは仲本千津がデザインし、ウガンダのシングルマザーたちが縫製したもの。最初は4人だったスタッフも今は21人。学生時代からアフリカのために何ができるかを考えてきた。女性が自立すれば社会が変わると、目を輝かせる。
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がらんとした出発ロビーで、仲本千津(なかもとちづ)(36)はスマートフォンの画面に呼びかけた。
「これからウガンダに行ってきますね!」
仲本は、アフリカンプリントで作られたバッグや雑貨を製造して販売するブランド「RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)」を経営する社会起業家だ。コロナによる渡航制限が解除されてすぐの昨年10月、成田空港でインスタライブを行ってから、赤道直下の東アフリカ、ビクトリア湖に面したウガンダへ飛んだ。
苦境のファッション業界にあって、SNSでの精力的な発信や通販を駆使し売り上げを伸ばしている。商品を製作するのはウガンダのシングルマザーが主だ。20年ものあいだ内戦が続いたとあって、それぞれが壮絶な過去を持つ。
「彼女たちを雇用することで、ウガンダのみならず、世界の女性たちが自立し、自分らしく生きられる社会を実現したい」と仲本は目を輝かせる。
26歳で大手邦銀を退職。笹川アフリカ協会(現ササカワ・アフリカ財団)の駐在員としてウガンダの首都カンパラで農業支援にかかわっていた2014年に、アフリカンプリントに出会った。布屋の床から天井すれすれまでうずたかく積まれた布たちを写メで送ると、日本人の友達から「可愛い!」と絶賛された。日本をマーケットにしたビジネスができると直感した。
アフリカの貧困問題解決のために何かできないかと考えていた。ウガンダの農村地域で車を走らせれば、道沿いのギャンブル場にたむろしているのは男性ばかり。家事や育児をこなしながら外でも働いているのは女性だった。一夫多妻制が残り、突然夫が帰ってこないなどよくあることと聞いた。駐在員として農業支援をするなかで、女性の勤勉さやエネルギーを実感していた。