投資が成功しFIREを達成した達人も、かつては初心者。そこからどんな投資をして、生活を支えるだけの運用益を実現したのか。全員が口を揃えたのは、「米国株」のすごさだった。AERA 2021年4月5日号から。
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今回、FIREを達成した投資家たちが取材で口々に語っていたのは「株が大好きだった」「投資を始めて人生が変わった」など、株式投資に対する愛情と感謝の言葉だった。
「株式投資は怖い、危ない、損する」といわれてきたが、2008年のリーマン・ショック以降の十数年間、世界的に株式市場が好調を持続。投資してきた人と、してこなかった人の資産格差を広げる結果になった。
特にFIRE達成者の資産を大きく増やすことに貢献したのが米国株への投資だ。
00年1月から現在に至るまで約21年間の「日経平均株価」、米国の代表的な株価指数である「S&P500」、アップル、マイクロソフト、アマゾン、グーグル(親会社はアルファベット)など巨大IT企業を擁する「NASDAQ100指数」の推移を比較。
■31年間で64倍に急上昇
00月1月の株価を基準に伸び率を計算すると、日経平均はこの21年間で約1.55倍に上昇。起点となる00年1月が米国ITバブルの最中だったこともあって伸び率が抑制されているが、それでもS&P500は2.85倍、ナスダック100指数は3.7倍に上昇した。特に、17年1月、トランプ氏が米国大統領に就任して大規模な減税や法人税の引き下げを行ってからの伸び率は日米の乖離が激しい。
さらに期間を延ばして1990年4月からの伸び率を比較すると、当時バブルの最中だった日経平均株価はほぼ31年前と同じ水準ではいつくばっている。それに対して、S&P500は約31年間で12倍、ナスダック100指数に至っては64倍まで上昇している。
むろん、過去の実績が今後も続くとは限らない。しかし、アマゾン、アップル、マイクロソフトに加え、最近でも電気自動車のテスラや半導体のエヌビディア、コロナワクチンをいち早く開発した新興バイオ企業のモデルナなど、世界的に急成長する米国企業の顔ぶれを見ると、少なくとも今後10年程度は米国株安泰と考えてもそれほど的外れではないだろう。
今回取材したFIRE達成者の多くも、米国株で最も有名な株価指数S&P500に連動して動く投資信託やETF(株式市場に上場した投資信託)をこれまでも、そしてこれからも資産形成の核にしていきたい、という点では共通していた。