■資産取り崩さず暮らす
一方、慎重派の桶井道さんは、資産を取り崩すことに心理的な不安を感じるタイプ。資産自体は現状の額は取り崩さずにキープしつつ、その資産から生まれる株主配当金や分配金などだけで生活するのが理想という。
そんな桶井道(おけいどん)さんが資産を取り崩すことなく、配当収入だけで生活するのに有望な金融商品として言及するのは、米国市場に上場する「バンガード米国増配株式ETF」。単なる高配当株とは違い、増配株には業績が一貫して右肩上がりの高収益企業が多く、配当収入とETFの価格上昇の両方に期待できる点が魅力だ。
ただし、早期FIRE達成にはやはり複数の銘柄に分散投資するETFや投資信託だけでなく、ハイリスクでもより高い上昇率を見込める個別株に頼らないとなかなか難しい面もある。
「米国株にはアマゾンなどまだまだ上昇余地のある巨大IT企業もあります。私が昨年、最も利益を出した個別株が中国のアリババだったように、政治リスクはあるものの、中国のIT株も有望です。今、世の中を席巻している第4次産業革命のど真ん中にあるのがIT株なので、米中のIT企業を中心に個別株を探すのが有効でしょう。残念ですが、私個人はまったく日本株を見ていませんし、投資もしていません」(たぱぞうさん)
■GAFAM押し目買い
株式投資に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんも、FIRE達成には個別株投資が必要とみている。
「若くてまだ投資金額を失っても取り戻すチャンスがある最初の8年、つまり22歳から入社して30歳になるまでの期間は個別株にも積極的に投資したい。特に資産1千万円に達するまでは、リスクを背負った投資も必要になるでしょう」
馬渕さんが米国株投資で勧めるのは、「GAFAM」と総称されるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトといった巨大IT企業の株価が何かの拍子に大きく下落したところでの買いだ。
「上昇中の株価が投資家の利益確定などでいったん下落したところを買う手法を『押し目買い』といいます。米国株は長年上昇基調が続いているので、この押し目買いという手法が高確率で通用します。しかも世界的に知られた大企業でも株価が大きな値幅で上昇することも多く、『日本株に比べて負けにくいな』というのが私自身、実際に取引したときの印象です。そういう意味では昨年3月のコロナショックのような『暴落』のときに、GAFAMなど人気の米国株を『ここぞとばかりに買う』攻めの姿勢が必要だと思います」と馬渕さん。