エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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3月22日に公開された「報道ステーション」のWebCMについて、テレビ朝日は24日、公開を取り下げ謝罪した(番組公式ツイッターから)
3月22日に公開された「報道ステーション」のWebCMについて、テレビ朝日は24日、公開を取り下げ謝罪した(番組公式ツイッターから)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】「報道ステーション」のWebCMについて、テレビ朝日は公開を取り下げ謝罪

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 121位から120位へ。G7で最下位は変わらず。世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数2021」が発表されました。日本は教育や医療アクセスの男女格差はほとんどないのに、相変わらず政治・経済分野での格差が大きいため、低い順位にとどまり続けています。

 昨年、国は2020年までに指導的地位にある女性を30%に増やすとした202030目標を10年ほど先延ばししました。さらにコロナ禍では非正規雇用の女性が大きな打撃を受け、女性の自殺者数が増加。今年は森発言や“オリンピッグ”など、日本の意思決定層に染みついた女性差別が露見しました。

 ただ、ここ数年で、世論は確実に変わりつつあります。

 最近では、テレビ朝日「報道ステーション」のWebCMが批判を受けて撤回。若い女性が恋人か友人と思しき相手に話しかける設定で、産休明けの先輩が職場に赤ちゃんを連れてきたとうれしそうに報告し、ジェンダー平等を訴える政治家なんて時代遅れだと言います。それを聞いて画面のこちら側の人物は「こいつ報ステみてるな」と変化に気づくという筋書き。報道番組の広告で「ジェンダー平等なんて時代遅れ」が今どきの感覚であるかのように印象付けるとは衝撃です。こいつ呼ばわりに表れているように、ものを知らない若い女性も番組を見れば賢くなれるよ、という上から目線のアピールで、番組の好感度を上げるどころか女性蔑視を露呈してしまいました。

 作る人にも、見る人にも、染みついてしまった“テレビ的な”思考回路を更新する時期が来ています。そう考える人たちは放送局の中にもいます。今まで通りの流儀で世に出たものには「それは違うよ」と言い、新たな取り組みには「これはいいね」とエールを送って、変化につなげたいですね。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年4月12日号