――デビューが決まってから、不安を解消するためにどのような準備をしてきましたか。
WANDSの曲を聴き込んで、歴代のボーカルお二人の発声を、徹底的に研究しました。WANDSは子どもの頃から聴いていたのでなじみがありましたが、こんなにも一小節一小節、何度も注意深く聴いたのは初めてでした。音楽活動をするようになってから改めて聴いてみると、これまでとは違う新たな発見がありました。
――先代ボーカルの発声をどのように分析されたのでしょうか。
初代ボーカル・上杉昇さんの発声は、ロックなギターサウンドに合うような、とがった声をしています。現代では軽やかな発声が主流ですが、それとは真逆に行っている感じ。ド派手でかっこいいのですが、これを僕がやろうとすると、喉への負担が大きいんです。僕は喉が強い方ではないので、ライブの終盤になるときつくなるだろうなと。
逆に2代目ボーカルの和久二郎さんは、メタルバンドのボーカルに近く、ハイトーンボイス。じっくり聴いてみると、意外と喉を開いている。喉への負担は少ないのだということが分かりました。
お二人のイメージをもとに、最初はとにかく自分の声を寄せるようにしていました。過去のボーカルたちと、あまりにも別物になるのは違うかなと思っていたので。
――「最初は」ということは、途中からスタンスを変えたのでしょうか。
最初は原曲超えを目指そうとしていましたが、先代のイメージを取り入れて、再現性を高めていったところで、どうあがいても超せないことがわかりました。原曲はもう完成されていて、オリジナルが100点なんです。それは仕方ないと開き直って、これは自分の新曲なんだくらいの気持ちで歌い、別物として楽しんでいくことにしました。
――そうした器用さと、いろいろなタイプの歌い分けができる自在さは、上原さんの強みだと思います。
どれか一つが抜きんでているわけではないですが、器用にいろいろとできるところは、たしかに僕の強みかもしれません。