寄席の楽屋。前座さんに聞くと、数は少ないがよく笑うお客さんだそうだ。なんならこれ、リバウンドじゃないの? よーし、と意気込んで高座へむかう。嘘つき。まるで笑わねぇじゃねぇか。いつものつかみのマクラもさほど響かず、ネタに入る。「こんなもんかな……」と半ば諦めつつも、「いや、投げちゃならん!」と、黙々と淡々とサゲ(オチ)へ。瞬間……ドーーーーンっ!!という地鳴りのような笑い声が上がった。初めは反応が微かでもお客さんと自分を信じてやってれば、たまーにこういうことがあるからたまらない。最高の『リバウンド』頂きました! いや、滅多にないけどね。
リバウンドはどこへ飛ぶかわからないから面白い。あ、おしっことコロナ以外です。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中
※週刊朝日 2021年4月16日号