都市部ではもはや定着した感のある「シェアハウス」。若者が中心だったが、しだいに高齢者に広がりつつある。一人暮らしの不安を解消し、サポートを受けたり、人と交流したりしながら、自立した生活を続けられるからだ。

 お年寄りにとって、シェアハウスの大きなメリットは、人と同居することで孤立を解消し、一人暮らしの不安を和らげることだろう。

 神奈川県伊勢原市にある「グループハウス欅(けやき)」は、オーナーの岩崎弘子さん(70)が、夫とともに13年前から運営するシェアハウスだ。3月末までは女子大生ら20代の女性と高齢者が同居していたが、大学生が卒業したりして、現在は80~90代の4人が暮らしている。4人とも夫を亡くした女性たちだ。

「若い人が卒業すると寂しくなるわね。でも、また遊びに来てくれることもあるのよ」と、入居13年目の秦ヤス子さん(85)。夫を病気で失い、妹の紹介で入居した。

「若い人とは時間が合わないから、一緒に食事することは少ないけど、みんないい子。若さももらえるし(笑い)」(秦さん)。オーナーの岩崎さんも、「若い人がいるほうが、お年寄りも気分的に弾む」と、異世代同居の利点を挙げる。

 入居者の最高齢は岩崎さんの叔母である98歳の茂村あきさん。茂村さんが高齢を理由に賃貸住宅が借りられなくなったのがきっかけで、岩崎さんが自宅の横に、高齢者が安心して住める共同住宅を建てた。「私は大家族の中で育って、我慢や引き際など、人とうまく付き合う方法を学べました。それが私を人間的に成長させてくれたので、そういう場をつくりたかったんです」(岩崎さん)。

 朝夕の食事時と、手芸や習字などをして過ごす毎週土曜恒例の趣味の時間はリビングルームで顔を合わせるものの、それ以外は個人で行動することが多い。「プライバシーも大事だから、人の部屋には入らないのがルールです」(同)。適度な距離感を保ちつつ、身近に人がいる安心感もある。

「私はいちおうオーナーだけど、嫁みたいな存在。いびられはしないけど」。みんなから“奥さん”と呼ばれる岩崎さんは笑う。

 朝晩の食事を作り、共用部分の掃除や病院への送迎なども行う岩崎さん。卒業した大学生たちも、具合が悪くなった人を見守るなど、自発的に高齢者のサポートをしていたという。

週刊朝日 2013年5月31日号