記者の質問に答える安倍晋三前首相 (c)朝日新聞社
記者の質問に答える安倍晋三前首相 (c)朝日新聞社
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 月曜日の午前10時頃、車から降りてきた男性は何か考えごとをしているかのように、伏目がちに歩いた。オールバックになで上げられた髪。スーツの左襟元には、国会議員の秘書時代と同様に、バッジをつけている。小脇には分厚いファイル2冊を抱え、「あべ晋三事務所」と看板が掲げられた建物の中へと消えていった――。

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 この男性は、安倍晋三前首相の元公設第一秘書、配川博之(はいかわ・ひろゆき)氏。「桜を見る会」をめぐる問題で昨年12月に公設秘書を辞職したが、「現在も私設秘書として安倍事務所に勤務している疑いがある」と、「しんぶん赤旗」日曜版(4月4日号)が報じたのだ。

 冒頭のシーンは3月29日、同紙が山口県下関市の安倍事務所でとらえたものだ。同紙は表舞台から姿を消した配川氏の姿を激写し、事務所に入る瞬間の写真を紙面に掲載した。

 さらに7枚のスクープ写真を歩いて来た順番に組み合わせ、連続コマ送り動画としてツイッター上にアップした。動画には「『桜』で辞職の安倍前首相秘書 しれっと復職」という字幕が入っている。

 日曜版編集部は、こう説明する。

「複数のニュースソースから『配川氏が今も事務所で働いている』『今は常勤ではなく非常勤のような形』『地元の会合では公設秘書から私設秘書になりましたと言っている』などという情報を得て、事務所前で張り込んだところ、撮れたというのが経緯です。つけていたバッジが何かは不明です。動画は30秒ほどの短いものですがすでに9万回以上も再生されており、反響は相当なものです」

 配川氏が公設秘書を辞職したのは「桜を見る会」前夜祭の問題がきっかけだ。「桜を見る会」の前日、都内のホテルで開かれた夕食会の費用を、安倍氏側が補てんしていたのではないかという疑惑が持ち上がった。東京地検特捜部は昨年12月24日、2016~19年分の後援会の収支報告書に夕食会をめぐる3022万円を記載しなかった政治資金規正法違反(不記載)の罪で、後援会代表の配川氏を略式起訴。東京簡裁は罰金100万円を命じ、配川氏も即日納付した。特捜部は秘書らと共に告発された安倍氏は不起訴(嫌疑不十分)とした。

 疑惑の渦中、追及を受けた安倍氏は、国会や記者会見などで秘書が独断でやったという趣旨の弁明に終始。「今回、こうしたことが起こり、本人も反省の上、公設秘書を辞職したところであります」と、配川氏の公設秘書の辞職で幕引きを図った。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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