2020年に世界中に感染が広がった新型コロナウイルス。中国では伝統医学である中医学と西洋医学を併用し、新たに開発した処方でコロナ重症化を防いだという。一方、日本では西洋医学中心の治療のままだが、今後、予防や回復において、漢方薬への注目が集まっている。週刊朝日ムック「未病から治す本格漢方2021」では、上海在住の日本人医師に取材し、中国が感染を抑え込んでいる理由を聞いた。
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2019年12月、中国・武漢での発生に端を発する新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)。
武漢では、20年1月23日の都市封鎖以来4月8日の封鎖解除までの約2カ月半、政府主導のもと、コロナ専門施設に患者を集約し、無症状から重症までの患者を治療した。
そのなかで重要な役割を果たしたのが、中医学(中国の漢方。漢方という呼び名は日本でのもの)だった。
西洋医学の感染症、呼吸器専門医などと中医の協力による中西医統合治療が実践された。「三方三薬」と言われる緊急用の中医薬を開発し、大量に発生したコロナ患者に対して無症状から重症まで細かく治療にあたり、コロナを封じ込んだ。
「三方三薬」とは、三方が清肺排毒湯(せいはいはいどくとう)、化湿敗毒方(かしつはいどくほう)、宣肺敗毒方(せんぱいはいどくほう)という三つの方剤。三薬が連花清瘟膠嚢(れんかせいうんカプセル)、金花清感顆粒(きんかせいかんかりゅう)、血必浄(けつひつじょう)注射液という三つの薬剤のことだ。
20年3月23日、国家中医薬局・余艶紅氏は、武漢での記者会見で、清肺排毒湯をはじめとする処方は、コロナ感染者の91・5% にあたる7万4187人に用いられ、90%以上の患者に有効だったと報告した。
さらに、湖北省の複数の仮設病院のなかでは、564人のうち一人も重症化しなかったという病院もあり、その他の病院でも重症化率は2~5%だったという。
上海にある中医学の医療施設・TOWAクリニックの中医科に勤務する藤田康介医師は、当時の状況を次のように話す。
「私自身は、中医学の医者ですが、我々の病院ではコロナの診療はできません。中国のシステムでは、発熱の患者さんをすべて、政府指定の発熱外来に誘導して、そこから感染者を新型コロナ専門病院に収容しました。治療にあたる医師は、中医、西洋医に関わらず、救急、感染症系、呼吸器系などの新型コロナ専門病院のスタッフに限定され、それ以外の医療機関で治療にあたることは法律により禁止されていました」