オーケストラの演奏で大切なのは音の波に乗ること。僕がステージの一番前に出ているので、指揮を見ると半拍遅れてしまう。聴こえている音の上で歌うしかありません。それがオーケストラとやる面白さでもある。技量が試されている感じがあります。

——昨年から続くコロナ禍で、多くのアーティストがライブを行う機会を逸した。

尾崎:1年間声を出せないというのはアーティストにとって致命的です。僕は今年に入ってから2回しか人前で歌えていません。人前で歌うのと配信ではわけが違う。今回のコンサートまでに人前で歌う準備をできるかが大切なことだと思っています。

 僕は毎年弾き語りのツアーを行っているんですが、昨年はちょうど緊急事態宣言明けから次の宣言までの間に全国18カ所を回ることができた。ツアーを実施することを選んだのは、非常事態のタイミングでも音楽は必要とされていると思うから。ネット系のコンテンツがあっても、生で見たい聴きたいというライブエンターテインメントを必要としている人は多い。だからこそ、僕がライブをしに行くという感覚で全国を回りました。「尾崎は変わらず動いているから、自分のタイミングが合った時にライブに来てほしい」という思いでした。

■音楽作りは日記に近い

——16年9月にデジタル配信された「始まりの街」でメジャーデビュー。オリジナルアルバム「Golden Hour」を昨年10月にリリースした。裕哉にとって、音楽を作ることは「日記を書くことに近い」という。

尾崎:音と言葉の両方から想起される自分の感情やシーンを綴っている感じです。曲を書く時は、悪い感情の時のほうが多いですね。負の感情が溢れ出る時のほうが強い曲になりやすい。音楽で自分の気持ちを昇華しているようなところがあります。ただ、僕は音楽がないと生きていけないとか、神から啓示を受けましたというタイプではありません。5歳でミュージシャンになると決めましたが、その理由は100%、父への憧れでしかない。愚直にあの人になりたいと父の背中を追って、努力するところはひたすらして、ここまで来てしまった感じです。

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