■マネージャーを肩車してスクワット
役者としての転機は1993年につかこうへい作・演出の「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」でバイセクシュアルの刑事を演じたこと。同作品で阿部の芝居が各界で高く評価され、主演俳優へと成長していったのだ。
一方、現在56歳でありながらあのスタイルをキープしているのも驚異的。ボディーメークのきっかけは映画「テルマエ・ロマエ」だったという。
「モデル時代はもっとほっそりしていましたが、『テルマエ~』に主演する際、裸の古代ローマ人を演じるため、消火器を持ってスクワットしたり、マネージャーを肩車してスクワットをしたりと、とにかくストイックに体を作り上げたそうです。また、ホテルの部屋に3時間こもって筋トレをし、ギリギリまで仕上げた状態で撮影に臨んだという逸話もあります。同作の撮影時は、すでに40代中盤。その年でそれだけ体を作れるというのは、ほかの役者にはなかなかまねできないと思います。今も演じる役に合わせて、しっかりボディーメークをするそうです」(前出の芸能記者)
TVウオッチャーの中村裕一氏は俳優・阿部寛の魅力を次のように分析する。
「ベテランでありながら、常に若々しく、変にくたびれた雰囲気がまったく感じられない。それでいて重厚さや渋さも兼ね備えており、何よりたたずまいに嫌みがなく、男女ともに好感度が非常に高い。他には代え難い俳優の一人であることは間違いありません。きっと、どん底からはい上がってきた彼からにじみ出る人間的な深みが多くの人を惹きつけるのでしょう。シリアスからコミカルまで役の幅も広いですが、彼が本領を発揮するのは主にコメディー。『TRICK』や『結婚できない男』シリーズしかり、他にも山田孝之と共演しているウーバーイーツのCMや、『ドラゴン桜』の宣伝で出演した『オールスター大感謝祭』でのアーチェリー対決など、本人が真剣にやればやるほどユーモアがあふれ出し、見ているだけで心が癒やされます。また、有名な話ですが、ファンが個人的に作成した超シンプルな『阿部寛のホームページ』をかたくなにオフィシャルとして使い続けているところもユニーク。俳優としても一人の人間としても、まだまだ底知れない魅力を隠し持っています」
若き日に辛酸をなめた経験があるからこそ天狗になることなく、日本を代表する俳優にまでのし上がることができた阿部寛。やはり、国民に愛される“息の長い役者”になるには、それ相応の理由があるのだ。(藤原三星)