ローカル線の設備は、完成からかなりの歳月を経ているものが多い。
「現在の基準で不適格なものが多く、災害で復旧できなくなって、廃線になるところがいくつもあった」(板谷さん)というだけに、老朽化した設備の補修に巨費がかかるだけではなく、安全面での心配も尽きない。
いまや、利用者の少なくなった路線は車などの移動手段にとってかわられ、鉄道の位置づけが変わりつつある。
郊外には大きな駐車場を備えたショッピングセンターができたり、その周辺の道路がよくなったりしている。一方、かつて多くの人が行き交った駅前の商店街は人気を失い、衰退の一途をたどるケースは珍しくない。
中村さんも次のように証言する。
「ローカル線について地元の人たちと話し合った際、『路線を残したいのであれば使わないといけない』と向けると、彼ら自身が『不便だ』と言って利用していなかった。ノスタルジー(哀愁)だけで残せる時代ではなくなった」
では今後、廃線となるのはどこなのか。
鉄旅オブザイヤー審査委員を務める鉄道ライターの杉山淳一さんは、極端に輸送密度の低い区間をもとに、客観的な基準で地元と協議していくのがいいとアドバイスする。
まずは100人未満、次に200人未満、500人未満……といった具合に対象を広げていく。「下から順に切っていくしかない」(杉山さん)とみる。
この区間に学校があるとか、将来何かを建てる計画があるとか、個別事情を考慮しすぎずに判断すべきだという。
そのうえで、中村さんは「早くバスに転換して、新しい交通機関にお金を投入したほうがいい」と提案。板谷さんも、バスでも経営が難しく、車を運転できない高齢者らがいる地域では「一部の人にタクシーチケットを配ったほうが合理的」だとした。(本誌・浅井秀樹)
※週刊朝日 2021年4月30日号より抜粋