前提として河西さんが指摘したのは、拡大した象徴天皇の仕事をどうするのか、それを先に話すべきだということ。平成の時代、天皇は皇后とともに仕事を広げ、それが国民の敬愛につながった。だが、人手が減るこれからも続けていくのか。それを話さず、女性皇族の活用を議論するのは本末転倒だ、と。
「眞子さんと佳子さんは20代、愛子さんも今年20歳になります。だからとにかく彼女たちの位置付けをということで、『宮家』の検討に収斂する可能性はあると思います。ですが、退位を強くにじませた16年の『おことば』で、当時の天皇は象徴の役割、仕事について考えを述べた。それに対し、国民の側はどう応えるのか。そこから議論するのが本来だと思います」
次に憲法の話になった。天皇制維持のために「皇位は、世襲のもの」と定めた第1章と、「基本的人権」視点で貫かれた第2章以降。そのずれが「皇室という苦しみ」の根本にある。だから、「制度そのものがなくなれば、矛盾は解消します。でも日本を統合していたものの一つをなくしていいのかというと、なかなか答えが出ない」と河西さん。でも、と言ってこう続けた。
「世襲の人たち、つまり人権が制限されている人たちがいることで『統合』というものがある。国民がそう意識すると、小室さんという存在も違って見えるのではないでしょうか」
(コラムニスト・矢部万紀子)
※AERA 2021年5月3日-5月10日合併号より抜粋

