「どのような治療でも副作用や合併症、後遺症のおそれがあります。診療科の連携でそれらをできる限り少なくする工夫を重ね、合併症が生じた場合は各部門が連携して対処できる体制を整えています。泌尿器科と重粒子線治療センターが同じ病院で治療をおこなっているため迅速に対応できる点が強みでしょう。また、手術も放射線治療もそれだけでは完治できないケースもありますので、再発時に泌尿器科が中心となって適切に次の治療を検討できます」

 がんの治療は手術や放射線治療で終了するわけではない。治療後の合併症に対するケアや再発のチェックが5年以上続く。特に前立腺がんの放射線治療を選択した場合、極めてまれだが「晩期合併症」として、10年以上経って血尿が出たりすることがある。

「これらの経過観察や再発チェックなどのフォローアップも含めて、すべて当院で対応することは、現実には不可能です。紹介していただいた元の病院や近隣の泌尿器科診療所と連携してフォローアップをお願いし、何かあったときに戻していただく体制で患者さんを支えています」

 同院では、横浜市泌尿器科医会と共同で、「前立腺癌診療パス」という仕組みを立ち上げ、手術・治療後の患者が不安なく、がんセンターと同じかそれ以上のレベルの経過観察ができる体制を構築している。

 岸田医師は、今後も「治療の質」の向上により力を入れ、「合併症が少なく、根治性の高い」治療を求めて工夫を重ねていくと強調する。

「尿失禁対策や性機能の温存、進行例に対する拡大リンパ節郭清(かくせい)は現在も広くとり入れており、進行がんであっても前立腺周辺にとどまっていれば手術を中心とした集学的治療で完治に導くことをめざします。さらに神奈川県全体、日本全体のがん診療の進歩につながるような新しい知見を発信することも目標としています。当院併設の臨床研究所という基礎部門との共同によって、がんを深く理解し立ち向かう手段の研究にもすでに取り組んでいます」

(文/近藤昭彦)

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