イスラエルで、2回のワクチン接種を終えた住人のスマホ画面に表示される「緑のパス」 (GettyImages)
イスラエルで、2回のワクチン接種を終えた住人のスマホ画面に表示される「緑のパス」 (GettyImages)
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「緑のパス」を提示してコンサート会場に入ろうとする女性 (GettyImages)
「緑のパス」を提示してコンサート会場に入ろうとする女性 (GettyImages)

 レストランの屋内に着席できるのはスマートフォンで「緑のパス」を提示した人。結婚式などイベントは屋外500人、屋内300人まで、95%以上が緑のパスのある人──これらはワクチン接種率で世界トップ水準を誇るイスラエルの話だ。

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 同国駐日大使館によると、緑のパスは新型コロナウイルスのワクチン接種を2回した証明書。政府が2月から発行し、接種後にスマホへ送る。国内ワクチン接種は昨年12月に開始。1回以上の接種率が4月上旬に国民の6割を超え、うち9割以上は2回目も受けた。

 ワクチンを1回以上接種した人の比率は、4月中旬時点で英国が約5割、米国が約4割、欧州連合(EU)十数%など。約1%の日本をしり目に、各国で接種証明書「ワクチンパスポート」活用の動きが始まっている。

 欧州委員会はEU加盟国で互換性のある「デジタル・グリーン証明書」を導入する。夏の観光シーズンが視野にある。米ニューヨーク州は3月下旬、スマホアプリでワクチンパスポート運用を開始。全米初で、州内のイベントなどに参加できる。中国は3月初め、海外渡航者向けにワクチンパスポート発行を開始した。

 航空業界では国際航空運送協会(IATA)が、ワクチン接種記録を登録できるモバイルアプリの本格運用を5月に開始予定。豪カンタス航空のアラン・ジョイス最高経営責任者(CEO)は昨秋、地元テレビで国際線利用者にワクチン接種を義務づける考えを示した。今後はワクチンパスポートを入国条件にする国が出てくるかもしれない。

 経済回復の鍵になりそうなワクチンパスポートだが、日本の動きは鈍い。河野太郎ワクチン担当相は3月の国会で「国際的に必要な状況になれば検討せざるを得ない」と述べながらも、国内使用を「考えていない」と答弁した。

 ただ、実際に導入するとなるとハードルも多そうだ。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんは「科学的、法律的、倫理的問題が山積み」と語る。「ワクチン接種を広げたいということもあるのでしょうが、接種したくない人の意思が尊重されず、さまざまな活動で差別される人が出ることが懸念されます」

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