AERA 2021年5月3日-5月10日合併号より
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 もしコロナ禍の今、災害が起きたらどうすればいいのか。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号は、専門家に防災対策を聞いた。

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 足元では新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない。そんな状況で、大地震に襲われたらどうすればよいのだろうか。

「今できる備えに全力を注ぐことが重要です」

 と話すのは、総合防災コンサルタント事業を行う「防災クリエイティブマネージメント」(大阪府大阪狭山市)の防災アドバイザー、岡本裕紀子さん。

 岡本さんは、コロナの感染が拡大しているからといって災害は待ってはくれない、「今だからこそできること」という視点を持ってほしいと訴える。

 岡本さんは「コロナ禍でやっておきたい10の防災対策」を挙げる。

 家族会議に感染予防グッズやモバイルバッテリーの準備、飲料水や食料の備蓄、簡易トイレ……。いずれもステイホームでも取り組める防災対策だ。

 コロナ禍での感染予防グッズでは、マスク、体温計、アルコール消毒液など衛生用品の必要性を説く。床を介した感染を防ぐためのスリッパ、清潔な口内環境を保つためのマウスウォッシュ、そして爪切りを勧める。

「手先に潜む細菌対策に有効です。断水が発生している中での被災生活では爪の間に汚れがすぐにたまってしまうこともあります。19年10月に東日本を襲った台風19号で開設された避難所では、爪切りのニーズが高まりました」

 それでも心配なのが、避難所での感染リスクだ。

 岡本さんは、(1)3密を避ける、(2)手洗い、(3)咳エチケット、(4)換気。この4点は常に心がけてほしいと強調する。

「当たり前と感じるかもしれませんが、災害時には、より一層その『当たり前』を意識的に実践する必要があります。当たり前の積み重ねが、確かな感染予防の力となります」

 一方、在宅避難では「日頃の家庭での対策が不可欠」と言う。

「災害後に必要になる食料品や日用品など、生活に必要な物品を多めに確保しておくことを習慣化させましょう」

■普段より多めの備蓄を

 昨年春を思い出してほしい。コロナが日本でも広がり、全国的にマスク不足になった。いざという時に必要になるものを普段から多めに買っておけば、非常時に余裕を持てるという。

 大雨をもたらす梅雨や台風も近づく。「防災は一日にしてならず」と岡本さん。

「私たちは災害とは常に背中合わせです。防災意識を継続して持ち続け、少しずつでも良いので着実に備えを積み上げていくことで、自分自身、家族、そして地域を守ることができます」

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年5月3日-5月10日合併号より抜粋