兵庫県明石市の泉房穂市長がAERAdot.の取材にこう語った。
「明石市にはワクチンが1箱だけ届きました。接種できるのは300人くらいです。それで予約を受け付けると殺到して、現場が大変。十分なワクチンを供給できないのは、国、菅首相の責任です。これで何とかやってほしいというのは、無責任すぎる。ワクチンが届かないのですから、7月末に高齢者の接種が完了なんて、できるわけないわ」
AERAdot.で既報したたように、菅首相の命令を達成しようと武田総務相が全国の知事や市町村長に直接、メールを送って「7月末に終わらせるように」と訴えている。総務省関係者がこう明かす。
「厚労省調査に対し、『7月中には終わらない』と回答した市町村にはローラー作戦で電話をかけまくり、カネ(財源措置)というニンジンにぶら下げながら、『7月中に接種が終わるような接種計画だけでも作ってくれ』、そして7月中は無理という回答だけでも『撤回・修正してくれ』という上意下達の指示を出しています。都道府県の副知事や市町村の幹部に直談判しようと、出向している官僚をリストアップ。官邸の意向がダイレクトに伝わるよう訴えています」
しかし、自治体からは『ワクチンが足りていない』『ワクチンが届く日程をわからないと、間に合うとは断言できない』『ワクチンが来ても医療従事者が確保できるか』など前向きな回答が得られない状況が続く。
九州地方の市長はAERAdot.の取材に対し、総務省のローラ作戦を認めた上で、呆れながらこう明かした。
「総務省から何度か連絡がきています。菅首相が7月末と国民に約束したから至上命題と言ってきた。しかし、ワクチンは届きません。うちのような田舎町だと、医療従事者の確保もそう簡単に確保できません。そこを説明すると、ガッツと気迫で頑張ってくれと精神論のようなことを担当者は言っていました。連休明けには7月末にできるか、回答してくれと言っていたが、要は連休も働けと強要しているようなもの。ワクチンも届かない状態でどうしろと言うのか。官僚ってどうしてこんなバカなことを言うんですかね。ガッツと気迫でコロナを克服できるわけありません」