五臓には、それぞれが属する「五季」があり、季節とも深い関わりがあります。春は「肝」、夏は「心」、長夏(ちょうか)(日本では梅雨時にあたる)は「脾」、秋は「肺」、冬は「腎」と関連づけられ、対応する季節に五臓の働きは弱くなります。

 例えば、冬には「腎」の働きが悪くなりやすく、冷えや血流障害、泌尿器系のトラブルが起こりやすくなります。体質的に冷えやすい人の場合、冬には腎の働きが悪くなるため、より強い冷えのトラブルが起こりやすくなります。腎によいとされる食材である羊肉やうなぎなどを積極的にとることで、腎の働きを補い、トラブルを未然に防ぐことができると
考えます。

 このように漢方では、体質と季節とのバランスを考えた食材を選ぶことで食養生ができ、体調を整えることができると考えられています。

■五臓

からだを構成する「肝・心・脾・肺・腎」の五つを指す


春に働きが悪くなる。肝が弱まると、月経異常やイライラ、自律神経失調症などを招く。代謝や解毒作用が弱まり、運動神経なども衰えやすくなる。筋や目のトラブルも。


夏に働きが悪くなる。心が弱まると、動悸や不整脈、不眠などの症状を招き、血と気のめぐり、精神が不安定になる。顔色や舌が赤くなって、からだに熱をもちやすくなる。


長夏に働きが悪くなる。脾は水分代謝にも関係があり、働きが悪くなるとむくみや下痢などの症状が表れることも。胃腸病やジュクジュクした皮膚の炎症が起こりやすくなる。


秋に働きが悪くなる。肺が弱まると、呼吸器系や皮膚疾患のほか、花粉症などのアレルギー症状を招く。水分代謝や免疫力の低下、皮膚のバリアー機能が衰え、皮膚の乾燥トラブルが起こりやすい。


冬に働きが悪くなる。腎が弱まると足腰が弱まり、白髪、記憶力の低下などの老化現象を招き、成長や発育、ホルモン分泌が衰えやすくなる。冷えや血流障害、泌尿器系のトラブルも起こりやすい。

(文/石川美香子)

教えてくれたのは:杏仁美友先生/Miyu Kyonin/国際中医師、中医薬膳師、漢方&薬膳アドバイザー。一般社団法人薬膳コンシェルジュ協会代表理事。薬膳や薬膳茶の講師、メニューや商品開発、講演会など多方面で活躍。近著に『プレ更年期の漢方』など。

※週刊朝日ムック「未病から治す本格漢方2021」より抜粋