

俳優になって半世紀以上、映画出演本数は120本を超える吉永小百合さん。最新作「いのちの停車場」では、その俳優人生で初めての医師役に挑んだ。しかし、新型コロナウイルス拡大の影響で役作りのための病院見学も中止となった。吉永さんはこのコロナ禍で医療のことだけでなく、さまざまなことを改めて考えたという。
【前編/吉永小百合がずっと夢見ていた医師役に 出演122本目の映画「いのちの停車場」】より続く
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吉永さん自身のライフワークとしている、平和を訴えて35年来続けている詩の朗読会も、多くは中止に。だが、戦後75年の節目となる昨年1月の「吉永小百合・坂本龍一チャリティーコンサートin沖縄『平和のために~海とぅ詩とぅ音楽とぅ』」、8月の新潟県十日町市での「吉永小百合・村治佳織チャリティ朗読コンサート」は実現した。前者は詩の朗読とピアノ演奏、沖縄を代表する歌手・古謝美佐子さんの歌で、平和の尊さを伝え、平和を願う催しだった。
吉永さんは68年の映画「あゝひめゆりの塔」に主演し、沖縄と沖縄戦にかかわりを持って以来、戦争と平和を考え、重い課題を自らに背負わせてきた。悲惨な歴史に思いをはせると、観光気分で沖縄の地を踏むことにはためらいがあった。それから50年余の歳月を経て、沖縄の死生観や自然、沖縄戦などをつづった詩を、坂本さんのピアノ演奏にのせて朗読し、古謝さんや子どもたちとともに、「てぃんさぐぬ花」を歌った。珠玉の時間に、長年の心のつかえがようやく消えた思いがした。
「沖縄に続いては、プライベートで、カンボジアとベトナムを旅しました。戦争といえば、これまでにポーランドにあったアウシュヴィッツ強制収容所を訪ねたりしていますが、戦争の世紀といわれる20世紀の半ばに生を受けたひとりとして、ベトナム戦争もずっと気になっていたんです」
最初にアンコールワット、アンコールトムを訪れ、ベトナムに入った。