万事この調子である。ちなみに、スズキさんはぬいぐるみ蒐集家だが、夫は隙あらばぬいぐるみを減らそうと狙っている。でも彼女は、小さいからいいだろう、珍しいからいいだろう、と言い訳を繰り出しては、購入にこぎつける。

 ふたりの攻防戦を見ていると、なんだか和む。まるで小学生の放課後みたいで、コロナ禍の日記であることを一瞬忘れてしまうくらいだ。現在本作は2019年版、20年版が出ているが、この調子で夫婦仲良く喧嘩して、老後までずーっと出版を続けて欲しい。

 最後に紹介するのは、植草甚一『植草甚一日記』(晶文社)。1945年の8カ月分と70年の12カ月分を読むことができる。

「大規模空襲のため(被害ナシ)早朝六時起床。本郷ゆき洋書四冊購入」(1945年6月10日)

 植草さんは、戦争中でも毎日のように洋書を買う。こんなときでも洋書って買えたんだ! と戦後生まれのわたしは驚いてしまうのだが、『丸善百年史』(丸善出版)によれば、洋書輸入ができなくても倉庫から在庫をかきあつめ、あるいは古書を引き受け、かなりの売り上げを記録していたという。すごい。コロナ禍でフィクションが読めない~目が滑る~(泣)などと言っている場合ではなかった。旺盛な知識欲によってあの戦争をやり過ごしていた人がいるなら、コロナ禍のわたしも少しは見習わなくちゃいけない。

週刊朝日  2021年5月21日号