事故で肋骨が折れるなどして気胸になることもあり、こちらは「外傷性気胸」という。明らかな理由もなく発症するタイプを「自然気胸」という。佐藤健や相葉雅紀が苦しめられたのは後者のほうだ。
しかし、なぜ若年層では長身でやせ形の若い男性がかかりやすいのか。
「まだはっきりと解明されているわけではないのですが、仮説としては、成長期に急に身長が伸びることにより、骨格の成長に肺の成長が追い付かなくなっていることが原因なのではないかと言われています。肺はあばら骨の間に収まっていますから、骨格に合わせて肺も大きくならないと、肺の表面が引っ張られてしまう可能性があるのです」
引き金になっているのは、肺の表面にできる、“ブラ”という風船のような嚢胞(のうほう)だ。これが破裂することで肺に穴が開き、空気が外側に漏れてしまう。漏れた空気が胸膜腔(きょうまくくう)というスペースにたまることで、肺がしぼんでしまうのだという。
「まれではありますが、重症化すれば、心臓が止まる場合もあります。胸の中にたまった空気が心臓を圧迫して、血液が流れなくなってしまうためです。そこまで重症化すると、大至急処置が必要です」
ただ、身長の高さに比例して患者が増えるわけでもなく、ボリュームゾーンは160~170センチメートル台。細身ですらりとした人が多いが、中にはがっちりした体格の人も気胸になることがあるという。
実際、鍛え上げた肉体を持つアスリートたちも罹患している。サッカーの長友佑都もその一人だ。長友は、2018年10月のUEFAチャンピオンリーグの試合途中に発症。胸でボールを受けた際に痛みに襲われ、ピッチに倒れ込んだ。緊急入院の末、手術も行った。
陸上短距離の山縣亮太も、2019年に日本選手権100メートルで連覇を目指していた中、気胸のため欠場を余儀なくされた。
「もちろん競技に支障が出ると思います。運動すると病状が進行する恐れがあるので、激しい運動は控えてもらうようにしています。安静にして肺が元通りになれば、通常通りのパフォーマンスができるようになると思います」