車内がビニールシートで埋め尽くされたようなバスに乗せられ東横インへ。政府が借りあげていて、一般の宿泊者はいない。隔離される人の大半は日本人だった。
隔離感……。日本のほうが強かった。部屋から出られない情況は同じだが、タイとは微妙に違う。食事はドアに前に置かれるが、タイはスタッフがドアをノックした。しかし日本は館内放送。タイの隔離ホテルの食事は、ときに麺になったり、地方料理になったりとホテルの色が出てくるが、日本は一律、お弁当。内容は変わるが、見た目はあまり変わらない。日本の強制隔離は無料だから、これも仕方ないか……と思うが、この環境で10日以上になるとかなりきつい気がする。
ホテルでの隔離後の日本人の行動はばらばらだった。4日間の隔離を終え、空港検疫が運行するバスでホテルを離れた。バスは成田空港経由で羽田空港に向かう。僕は羽田空港まで乗ったが、成田空港で降りた乗客は、地上にいた職員に堂々と国内線の搭乗口を訊いていた。飛行機には乗ってはいけないはずだが。しかし地方在住の人のなかには、隔離の残り10日ほどをすごすホテルに向かう人もいる。
隔離にはじまって隔離に終わったコロナ禍の旅。この情況はまだ続く。
■下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)。