長年にわたり頭痛の診療や啓発活動をおこなう、日本頭痛学会名誉会員、日本頭痛協会代表理事の間中信也医師に、頭痛治療の現状や注意点について聞いた。

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 慢性頭痛の治療は近年、目をみはる進歩をとげました。今年5月、頭痛医学の最新の知見を反映させた「慢性頭痛の診療ガイドライン」の改訂版が発行されました。頭痛治療を旅行に例えると、地図にあたる「国際頭痛分類」、旅行案内に該当するガイドライン、旅行記録ともいえる「頭痛ダイアリー」といった診療ツールがそろい、最適な治療への近道が見つけやすくなりました。

 いくつかの予防薬が保険で使えるようになったことは、画期的です。治療薬では、片頭痛の特効薬トリプタンに続く新たな頭痛薬の開発も進み、商品化が期待されています。

 毎日のように痛みが続く慢性頭痛の場合、心の問題が大きく影響していることがあり、その場合は抗うつ薬が予防に有効です。「うつ病の薬」と聞くと抵抗感を持つ患者さんもいますが、たとえば抗うつ薬の「トリプタノール」の用量は、うつ病治療では1日150ミリグラム(最大300ミリグラム)に対して、頭痛治療には5~10ミリグラム程度とごく少量です。一方、同じく予防薬として使われる抗てんかん薬には肥満などの副作用もあるので、医師と相談のうえで使用します。

 一般に、予防薬は痛みと頻度を半分くらいに減らすことはできても、完全には止められません。また1~2カ月飲み続けないと、効果を実感できないことを理解しておく必要があります。

 とくに片頭痛の患者さんは、つらい症状がいつまで続くかと、不安に感じています。20歳くらいから片頭痛の特徴がはっきり現れ始め、女性の場合なら33歳ごろがピークとなりますが、それを過ぎるとたいてい片頭痛は楽になります。私が「片頭痛は治りますよ」と話すと、患者さんは急に表情が明るくなります。

 ですが、40歳くらいから緊張型頭痛に移行するケースが多く、さらにそこから薬物乱用頭痛に陥りやすいのです。とくに薬に頼りがちな患者さんは薬物依存になりやすいので、市販薬の飲みすぎに注意し、なるべく鎮静薬やカフェインが配合されていない、単一成分の鎮痛薬を使うとよいでしょう。

週刊朝日 2013年6月21日号