経営者に目を転じると、ワンマンで鳴らすスズキの鈴木修会長が粘り腰を発揮した。最初に社長の座に就いたのは1978年。以後、40年余りにわたって君臨。来月ようやく退任するが、後継者育成がなされていないことを危惧する声が多い。
とはいえ、必ずしも潔く辞めることが素晴らしいというわけではない。前述の黒井さんは、サッカーの三浦知良の姿勢を褒める。
「カズが戦力としてどこまで機能しているかは疑問ですが、50歳を過ぎてもなおしっかりとトレーニングを積んで、試合に備えています。その姿勢を知っているだけに、チームもファンも納得して支持するんです」
同様に尊敬されるアスリートとして、野茂英雄が挙げられる。メジャー球団から契約を打ち切られた後、ベネズエラの球団やマイナー球団で投げ続け、40歳になる年にメジャーで3試合に登板して投手生命をまっとうした。また、スキージャンプの葛西紀明は、2014~15シーズンのワールドカップルカ大会で最年長優勝を飾り、48歳の現在も現役で活躍中だ。
冒頭で紹介した吉永小百合も葛藤したあげく、<映画と一緒に自然に年を重ねていけたら>(同前)と、女優を続けることを決意。それから30年以上も主役を張っている。
引き際に正解はないが、その人の人生観は垣間見えるのである。(本誌・菊地武顕)
※週刊朝日 2021年5月28日号