さらに、「ウマ娘」の素晴らしい点は、キャラクターやデザインの設定に、実際の馬の設定やエピソードをしっかりと織り込んでいることです。美少女育成コンテンツやゲームなどは多数ありますが、現実との整合性を丁寧に行っているコンテンツは意外と少ないものです。

「ウマ娘」の場合、競馬ファンが見ても、納得のいくような設定がされています。キャラクターの髪の色や身長は、実際の競走馬のプロフィールに合わせており、性格や走り方なども細かく設定されています。例えば、ヒシアケボノは非常に大柄の馬ですが、ウマ娘でも身長180cmと大柄な体型になっていますし、数々の面白い行動で知られるゴールドシップという馬も、キャラクターに性格が反映されていて非常に面白いです。これらの設定がとても丁寧で、往年の競馬ファンも、競馬をよく知らないファンも夢中になって遊べます。フィクションの世界も、現実の要素をしっかりと織り込んでいくと、物語の中にスムーズに入り込めます。コンテンツにおいて、整合性の重要性はここにあります。

 整合性というのは、「無意識の不自然さ」をなくす作業です。例えば、和食の料理人のキャラクターをデザインする場合に、(実際の和食の料理人はヒゲや髪を伸ばしている人が少ないなぁ…)と思って調べます。こういう点は、実際に和食のレストランで料理を食べ、料理人を見ていないと、そもそも気づかない場合も多いです。実際に調べると、やはり和食の料理人の場合は、衛生上の理由であったり清潔感を演出するために短髪でヒゲを剃っている方々がほとんどです。イタリアンなどの洋食のシェフになるとまた別です。架空のキャラクターだとしても、和食料理人でキャラクターのデザインのアクセントとしてヒゲを生やしたり長髪にすると不自然になります。歴史上の人物であれば、言葉遣いや服装や思考回路も、現代とは異なっています。どのようなジャンルであっても、こういった情報の正確さは、フィクションであっても非常に大切で、コンテンツの核になります。

 キャラクターのデザインや納期の関係で、整合性の調整を怠ると、ユーザーもどこか不自然さを感じて物語に没頭できません。また、作り手に求められるのも、アニメやデザインのセンスだけでなく、元ネタとなる現実の知識です。アニメだけを見ている人が、良いアニメを作れないと言われるのは、このような擦り合わせを行うための根本的な経験や知識が不足するためです。アニメーターやYouTuberや漫画家やゲーム開発者になりたいと思う方々は非常に多いです。是非とも、現実の知識や経験を多く積み重ねてコンテンツ作りに生かしてほしいです。

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