新型コロナ感染拡大の影響で、がんなど病気の治療スケジュールにしわ寄せがきているケースもある昨今。そうでなくても、がんの治療では「手術が必要」と言われてから実際に手術をするまで、日があくケースが以前からあるようです。しかし、すぐに治療せずに、がんは進行してしまわないのでしょうか。がんにまつわるさまざまな疑問について、現在発売中の『手術数でわかる いい病院2021』(朝日新聞出版)で、専門医に聞きました。
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がんを告知された人たちは、治療についてどんな疑問や心配を抱えているのでしょうか。日本対がん協会の「がん相談ホットライン」では、年間1万件以上の電話相談を受けています。相談支援室の北見知美相談員はこう話します。
「むかしに比べ、医師は患者に対し、治療について詳しく説明するようになりました。しかし、そのなかからどれを選んだらいいか分からないという相談が増えています。それぞれのメリットとデメリットは説明されても、治療を選択するために必要な支援が足りないと感じます」
手術、放射線治療、薬物療法は、がんの3大治療です。また、治療には標準治療があり、効果や安全性が確認された現時点での最善の治療といえます。
しかし、「副作用がない治療法があると聞いた」「これでがんが治ったと紹介されている治療を受けたい」など、標準治療以外の代替療法についての相談も多く寄せられ、がんが治ると科学的に確かめられたものはないだけに危惧しているといいます。
「がんではなく“がんもどき”ではないか、といった相談もあります。私たちはその気持ちを受け止めながら、もしがんだったら、がんが進行することや、命に関わることもあるかもしれませんよと伝えて、医師からもう一度話を聞いてみることを勧めています」
どの治療がよいかをなかなか決められないのは当然です。
「悩むのはとても大事なこと。よく考えた末に出した結論は、後々まで患者さん本人の支えになります」と、北見相談員は強調します。
自らの生活スタイルも踏まえて、その人の人生にとって最良の治療となる選択をすることが重要になります。