田村さんにまつわるさまざまなエピソードが伝わっていますが、「トイレに行かない」「食事する姿を見せない」というのはだいたいが本当だそうですよ。「うちの子」の子役に聞くと、トイレに行ったら田村さんのマネージャーがいて、「いま使っているので…」ということもあったようです。
――徹底して「田村正和」であり続けたんですね。たくさんの俳優の方々とお仕事をされてきたと思いますが、田村さんのすごさを感じた瞬間はありますか。
持って生まれた色気がありますよね。学園ドラマである「うちの子」では、色気を出す必要はなかったのですが、回想で昔の恋人と会うシーンを作ってみたら、流し目というか、一瞬上を向いて下を見るという仕草さえ色っぽい。
僕たちはファミリーものや学園ものを作ってきましたが、他局では恋愛ものやハードな時代劇も演じていて、どの作品でもスター性を失わないのが本当にすごいんです。細かく芝居を見てもらえると、随所にそれを感じられると思います。いわゆる「上手いと見せない上手さ」ですね。
そして、台本に関して一切注文がない方でした。それでいて、こちらの想像を超える形で演じてくださる。「田村さん、ここまでやるか!」とみんな思っていたんじゃないでしょうか。一緒に本作りをしていた八木さん、伊藤一尋さんと「もっと田村さんで遊ぼう」といろいろと提案しましたが、それも全部表現してくださった。
いろんなところから「パパニュース」リメイクの話もいただくのですが、あれは田村さんじゃなきゃね、という話もします。三谷幸喜さんが、田村さんがいない以上、古畑任三郎が現場に戻ることはないと書かれていたのと同じように、パパニュースも田村さんじゃないと、と思っています。
(構成/編集部・福井しほ)
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