学校や保育所での感染報告が続く。子どもの感染や重症化リスクの増大が心配されているが、その原因はウイルスではなく、成人の行動にあるようだ。AERA 2021年5月31日号から。
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大阪府や北海道など、新型コロナウイルスの第4波で感染者が増えている地方では、児童や生徒の感染も報告され、臨時休校や学級閉鎖が相次いでいる。大阪府教育委員会によると、4月1日~5月12日に臨時休校した府立高校・支援学校は延べ174校と、すでに昨年度の年間休校数の8割近くに達したという。
■子ども感染しやすい?
厚生労働省によると、新規感染者のうち20歳未満が占める比率は、昨年4月に3.9%だったのが昨年9月には7.3%、今年1月には8.9%、4月には10.0%と、じわじわと少しずつ増えてきている。
当初は、新型コロナウイルスは子どもには感染しにくいとされていたが、だんだん感染しやすく変化してきたのだろうか。
「子どもの感染経路をみると、圧倒的に家庭内感染が多く、学校や保育所での感染は少ない。また、全国的に感染者の絶対数が増えている中で、とくに増えているのが20~40代という、子どもの親の世代です。つまり、新型コロナウイルスを家庭内に運び込む人たちの感染が増えた結果、その影響を受けて子どもたちの感染も増えていると考えられます」
聖マリアンナ医科大学の勝田友博講師(小児科)はこう分析する。
日本小児科学会は昨年7月から、20歳未満の感染者の症状や治療などの詳細を登録するデータベースを構築している。勝田講師も参加する厚労省の研究班が、4月27日現在データベースに登録されている1662人の感染経路を調べたところ、1171人(約70%)は家庭内感染だった。うち半数近い517人は父親経由と考えられ、母親(352人)よりも多かった。学校や保育所での感染はいずれも5%程度だった。
家庭内感染が多く、学校などでの感染が少ない傾向は、年齢が下がるほど顕著だ。文部科学省によると、同省に報告のあった今年1~4月の小学生の感染者の感染経路は70~82%が家庭内感染、学校での感染は3~6%だった。同時期、中学生では家庭内感染が61~75%、学校内感染は0~7%、高校生では家庭内が34~48%、学校内が17~23%だった。
高校生の場合、寮や部活などでクラスターが発生しているところもあり、学校での感染を増やしていると推測される。
厚労省の統計は10歳刻みなので10代には行動パターンの大きく異なる小学生から大学生まで含まれる。10代の感染者数が増えている背景は、さまざまだと考えられる。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERA 2021年5月31日号より抜粋