4月24日の中日戦(神宮)、1点を追うヤクルトの最後の攻撃。先頭打者として四球で出塁も、次打者のピッチャーゴロで二塁封殺された村上宗隆は、ベンチに下がると前列の手すりにもたれかかり、前のめりの姿勢を取った。
試合の上ではもうお役御免。ただし、ベンチでは大事な“仕事”が残っている。ダグアウトから身を乗り出して、グラウンドで戦う仲間のために手を叩き、ひときわ大きな声援を送った。
2死一、三塁と、長打が出れば逆転サヨナラの場面。ここで新外国人ホセ・オスナの一打が右中間を破ると、村上は手すりを乗り越えて大声で叫びながらグルグルと腕を回し、一塁走者がサヨナラのホームを踏むや、他のナインと共に一目散にヒーローのもとへと駆け寄った。
押しも押されもせぬヤクルトの四番バッターながら、村上のこうした姿を目にするのは珍しいことではない。ベンチでは常に声を張り上げ、ナインを鼓舞している印象がある。他の選手もやっていることではあるが、まだ21歳とはいえ188センチ、97キロの体躯で、四番を張る男がやれば嫌でも目に付く。
「よりいっそう声も出して、『青木さんだったらこういうことをするかな』とか『こういう声掛けをするかな』って、ベンチの中で考えながらやってます。チームが暗い時や、負けてる時に『次、次!』っていう声も青木さんが率先して出してましたし、そういう姿を僕たちも見てきてるので、そういう声出しもしていきたいなと思ってます」
村上がそう話したのは、チームの精神的支柱である青木宣親や、野手ではその青木に次ぐ年長者の内川聖一らが、新型コロナウイルスの陽性判定を受けた選手の濃厚接触者と認定され、2週間の自宅隔離を余儀なくされていた頃のことだ。
4月7日の広島戦(神宮)では、同点の7回裏に山崎晃大朗が勝ち越しタイムリーを放つと、ベンチの後ろから他の選手を押しのけるように前に飛び出し、バンバンと地面を叩いて両腕で大きくガッツポーズ。試合後のオンライン会見で話がそこに及ぶと「みんな(同じように)なったっしょ?たぶん。ファンでも記者でもなったでしょ」と笑い、さらに続けた。
「テツトさん本人もしっかり声を出してくれますし、先頭に立ってやってくれてるんで、そのキャプテンに乗せられながらじゃないですけど、僕たちもしっかりやらなきゃいけないなという思いもあります。その中でたぶん、ベンチ全員で声が出ていて、ベテランの嶋(基宏)さんもいますし、そういったところですごく大きな力が働いていて、僕も見習って声を出したいなと思っているので、今(チームとして)本当にすごくいい雰囲気でできています」