最近もまた『カミさんの悪口』を観返し、改めて田村正和の「等身大力」に恐れ入ると同時に、「中年」の概念も時代とともに大きく変化したことを実感していたところに飛び込んできた田村さんの訃報。気付けば、あの頃田村さんを通して見ていた「中年」の境地に自分もなり、老眼や四十肩に抗い、老いた両親の健康を案じたりしています。とは言え、今はアンチエイジングの知識や技術も進み、40代そこらではなかなか「中年」になりきれないのも事実。

 それは「役」を演じる世界でも同じであり、男も女も皆一様に若い。来年50歳の木村拓哉さんにしろ、すでに五十路を迎えた福山雅治さんにしろ、依然として老いる気配など微塵もなく、彼らが本当の「中年」になるにはあと10年ぐらいかかりそうです。堺雅人さん(47歳)、長谷川博己さん(44歳)辺りもまだまだ「中年」には程遠い雰囲気。やはり阿部寛さん(56歳)や中井貴一さん(59歳)ぐらい、50代も半ばを超えないと今や二枚目俳優は「中年」にはなれないのかもしれません。

 田村正和がそうだったように、いつの時代も「中年」という領域には、毅然としたコントラストを保っていたいものです。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2021年6月4日号

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