映画「ブルーへブンを君に」は、11日からイオンシネマ板橋ほか全国公開(c)2020「ブルーヘブンを君に」製作委員会
映画「ブルーへブンを君に」は、11日からイオンシネマ板橋ほか全国公開(c)2020「ブルーヘブンを君に」製作委員会
由紀さおり [撮影/写真部・戸嶋日菜乃、ヘアメイク/徳田郁子]
由紀さおり [撮影/写真部・戸嶋日菜乃、ヘアメイク/徳田郁子]

 2019年に芸能生活50周年を迎えた。コンサートやひとり芝居など、さまざまな分野で活躍する由紀さおりさん。映画初主演作で、「青いバラ」の生みの親である園芸家がモデルの女性を演じた。

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 目に映るのは、長良川の透明なきらめきと山々の深い緑、広大な空の青さ──。岐阜羽島から岐阜市内まで。由紀さんを乗せた車が、長良川沿いを走っていく。吹き込む風は季節ごとに違う香りがして、東京でついた垢を取り去ってくれるような心地よさがある。2012年のぎふ清流国体の開会式で「ふるさと」を歌って以来、岐阜でのイベントに呼ばれ、自然を大切にする人々と触れ合ううちに、岐阜が大好きになった。初主演映画をこの土地で撮ることに、不思議な縁を感じた。

「『初めての主演映画、どんなお気持ちですか?』と質問されることが多いけれど、私はこの『ブルーヘブンを君に』の主役は岐阜県だと思っています。私が演じた冬子という女性は、岐阜県で『ブルーヘブン』という名の青いバラを生んだ園芸家の河本純子さんがモデル。地方創生ムービーなので、地域の方たちと作り上げることが一番重要だと思って。映画を見てくださった方が、『あの人、本当は派手な暮らしなのに、こんな役やってるよ』って思われるのだけはイヤだったの(笑)。どうやったら岐阜の自然の中に溶け込めるかを大切に演じました」

 最初に会ったときの河本さんの「普通のおばあちゃま」という印象が、いざバラの話をするときにガラッと変わったことに由紀さんは驚いた。

「バラの話をするときは、カッと目を見開いて、妥協を許さない園芸家の顔になるんです。青いバラを作るまでには、たくさんの障害があったはずで、それを乗り越えた意志の強さをすごく感じたの。私自身もこの先の人生が、どのくらいあるのかわからない。でも、今を悔いなく生きていくということが大事だなと」

 70代の由紀さんは、映画を通じて、この時代を生き抜くためには、残りの人生をのほほんと過ごすのではなく、自分にできる努力はしなければいけないのではないかと再認識した。

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