「相棒」のレギュラーに抜擢され、昨年末から今夏にかけて、主演映画が立て続けに公開された篠原ゆき子さん。遅咲きの個性派女優は、“普通”の人生を送りながら、芝居であらゆる感情を剥き出しにする。
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いつから女優を目指したのか。はっきりとした時期は覚えていない。
「小さい頃は木村拓哉さんが大好きな、どこにでもいるミーハーな女の子だったと思います。この間、テレビで『タイタニック』が放送されたときも、『あ、この映画が公開された当時は、ディカプリオにハマってたな~』なんてことを思い出しながら観てました(笑)」
小学校から高校まで、桐蔭学園に通った。学校生活に特に居心地の悪さを感じたこともなく、目立ちたがり屋だったわけでもない。ただ、小学校高学年のときに、一度、芸能事務所のオーディションを受けようと思ったことがあった。
「親には内緒だったので、書類審査用の親の同意書を偽造したんです(笑)。『書類審査に通ったので、オーディションに来てください』という電話を母がとって、『オーディションがどうとか言ってるけど。何かしら?』と訊かれたので、慌てて、『え、知らない。切っていいよ。気持ち悪い』と嘘をついてしまい、その話は立ち消えになりました(笑)」
普通の、ありふれた人生を送ってきたと自分では思う。「でも、なぜか過酷な状況の中にいて、つらいんだけれど、明るく振る舞うような役のオファーが多いんです。なんででしょうね」と自問した。
「もしかしたら、3きょうだいの真ん中ということが影響しているのかもしれないなと思って。兄と妹がいるんですが、家族が何か問題を抱えたときに、必ずその場の空気を読んで、バランスを取るのが癖になっていた気がするんです。どこにでもある家族の問題に直面したときに、『あ、今この役がいない』と思って、そこに必要な役を演じていたような……」
大学在学中に、芸能事務所に履歴書を送った。演技のレッスンを受け、芝居のおもしろさに開眼したが、20代半ばまでは、いつ夢を諦めてもおかしくなかった。