男性ホルモンの一つ「テストステロン」の減少によって起きる男性更年期障害。テストステロンは人との関わりがなくなると減少するため、自粛生活やテレワークの普及により、患者数が増えることが懸念されている。
【データ】男性の更年期障害、かかりやすい年代は?主な症状は?
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男性ホルモンの代表格であるテストステロンは「社会性のホルモン」とも呼ばれる。社会に出て、人と交流し、周囲から認められることで分泌が促される。高齢でも社会の第一線で活躍している人はテストステロン値が高く、退職して隠居生活をしている人は低い傾向がある。順天堂大学順天堂医院泌尿器科教授の堀江重郎医師はこう話す。
「新型コロナウイルスの影響による自粛生活で人と会う機会が減ると、テストステロンが減少し、男性更年期障害を発症する人が増えることが考えられます」
男性更年期障害は、女性の更年期障害と同様、性ホルモンの低下によってさまざまな症状が出現する病気だ。医学的には「LOH症候群(加齢性腺機能低下症)」と呼ばれる。
女性は女性ホルモンの代表格であるエストロゲンが低下するのに対して、男性はテストステロンが低下する。
女性は閉経の前後10年の間にエストロゲンが急激に減少することから、さまざまな症状が出現するが、更年期を抜ければ、症状は落ち着いていく。一方、男性のテストステロンは20代をピークにゆるやかに減少していく。女性に比べるとホルモンの減少による不調を感じるケースは少ないが、女性のように期間が限定されていない。
「閉経は遺伝子によって決まっていることなので、更年期になれば女性の誰もが女性ホルモンであるエストロゲンが減少します。しかし男性の場合は何歳になってもテストステロンが減らない人もいれば、急激に低下する人もいて、更年期障害を発症する年代も個人差が大きいのです」(堀江医師)
60歳以上の約2割の人に、テストステロンの明らかな減少があると言われているが、テストステロン値が低いからといって、必ずしも不調を感じるわけではない。