「そういう場合には、脳の伝達物質が減ってくると補ってあげるのが大事なので必要なお薬です、というふうに説明します。うつ病が改善すると、まず眠れるようになるから、ずいぶんと楽になります。うつ病を放置して、つらい状態のままというのは避けてほしい」(和田さん)
特にコロナ禍の今は、なかなか外に出られず誰もがストレスがたまりがちだ。高齢者の中にも、生活に制限がかかること自体でうつになる“コロナうつ”と呼ばれる例が増えているという。本格的なうつ病になる前に、日ごろから気を付けたいことはどんなことだろうか。
医学博士で日本医科大学特任教授の海原純子さんは、「自分なりにため込まない工夫を見いだすことが大事」と強調する。
「一言で言えば、他人に悪く思われたくない一心で“NOと言えない人”が、気持ちを抑圧してうつ状態になりがち。どんな小さなことでもいいから、自分が熱中できる何かを持つと、ネガティブな感情を抑えられます。まずは自分が“嫌じゃなくやってしまうこと”を見つけることから始めてみて」
日ごろから、自分が穏やかな気持ちで過ごせる時間や、気持ちいいと感じることがどんなことかを把握しておくことも大事だ。例えば、お風呂にゆっくり入る時間、猫をなでるとき、マッサージ、朝窓を開ける瞬間など、どんな小さなことでもいい。
「それが自分の“心の救急箱”。そういう小さな引き出しをたくさん持っている人が、結局はネガティブな感情に引きずられにくい印象です」
浅い付き合いでいいから、孤立しないために誰かとつながりを持つことも大事だ。
「深いつながりが大事とも言われがちですが、意外と親しい人ほど言えない本音というものもあって、浅いつながりのほうが何でも言えるところもある。気がねなく話せる浅いつながりを持つことも、ため込まない工夫の一つです」
コロナで気分が沈みがちな日々、前向きに生きぬくには知恵が必要な時代だ。サインを感じたら、認知症より先にうつを疑ってみるべきかもしれない。(本誌・松岡かすみ)
※週刊朝日 2021年6月25日号より抜粋
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