――麻央さんとの思い出は尽きませんね

「NEWS ZERO」のキャスターを僕は12年やって、最後の方の放送回で、福島県の安達太良山に麻央さんと植樹した木を見に行きました。僕が出演する最後の日のエンディングの曲の映像のラストも安達太良山のシーンでした。

 ギリシャの言葉に“人はその木の木陰でくつろぐこともできないのになぜ木を植えるのか、なぜなら人は未来を見るからだ“というのがあって、植樹の時に麻央さんは植えた木を家族とまた見に行きたいなとか思ったかもしれない。どんな未来を思い浮かべながら植えたんだろうなとか、木を見るととても感慨深い。”あの時の木を見に行きたいですね“ってメールしたら見に行きたいですって返してくれたんだけど。見に行けなかったのは本当に残念ですけどね……。

 僕は今65歳ですけど、僕が麻央さんみたいな局面に立たされた時に、メールやブログにあんなしっかりした言葉を残せるかと言ったら自信がないですね。それを、34歳という若さで。まだまだ夢もいっぱいあっただろうし、思い残すこともあっただろうに、あんな風に闘病のブログを残せるっているのは凄いと思いますね。何かを残そうとしていた。また、それが自然に伝わってくるところが麻央さんらしい。僕は麻央さんから多くのことを学びました。

村尾信尚(むらお・のぶたか)1955年岐阜県生まれ。一橋大学経済学部卒業後、大蔵省(現・財務省)入省。主計局主計官、理財局国債課長などを経て2002年退官。2003年関西学院大学教授に就任。06年10月から18年9月まで「NEWSZERO」のメインキャスターを務めた。主な著書に『役所は変わる。もしあなたが望むなら』(淡交社)、『「行政」を変える!』(講談社現代新書)、『日本を変えるプランB』(編著、関西学院大学出版会)、『B級キャスター』(小学館)

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