同センターは「その部屋がないことが課題」(和田先生)だそうだが、退院後に在宅酸素が必要なケースなど、退院後の生活をシミュレーションしてほしい場合には、GCUの中に仕切りでプライベート空間を作り、両親が赤ちゃんと過ごせるようにしている。

「お母さんが不安を抱えていると母乳の分泌量が減るし、赤ちゃんの情緒にも影響を与えます。お世話の不安を少しでも解決してから退院してほしくて行っています。退院するときに『やってよかった』と言っていただけることが多いです」と和田先生。

 同センターは、周産期と小児医療を専門とする国内最高レベルの病院で、出産前の胎児から、出産後の新生児まで一貫して診療ができるため、ハイリスク管理を必要とする妊婦が日本全国の産院から紹介され、出産を迎えることも少なくない。

 しかしこうしたケースは、同センターで出産はするものの「『退院の日』を迎えることはない」(和田先生)とのこと。それはなぜなのか。

「赤ちゃんが家庭に帰れる日まで当センターでケアしてしまうと、地元に帰ったとき“主治医不在”の状態になってしまうから」(和田先生)だという。

「小さく生まれた赤ちゃんの子育ては、家庭に帰ってからが本番です。ご両親が赤ちゃんのことで不安や疑問を感じたとき、相談できる主治医が近くにいない環境は作ってはいけないのです。そのため、退院後も当センターでフォローすることが難しい赤ちゃんは、状態が安定した時点で地元の病院に転院し、退院までのケアを行ってもらうようにしています」(和田先生)

 状態が安定してからの転院とはいえ、NICUに入院中の赤ちゃんの搬送にはリスクがある。そのため必ず新生児科の医師と看護師が付き添い、搬送中のバイタルチェックを行う。

「通常は、車や新幹線などで搬送しますが、赤ちゃんの負担を最小限にするために必要であれば、ヘリコプターを使うこともあります」(和田先生)

 無事に搬送できたら、転院先のNICUでの状態を確認し、担当医にこれまでの経過を詳細に説明。後のケアとフォローを託す。

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退院したら病院の役目がおしまいではない