また、低出生体重児の母親は、自分や夫の両親の「もうちょっとおなかに入れておけなかったの」「あんなに小さくて大丈夫なの」といった心ない言葉で傷つけられることも多い。そのため、両親がNICUにお見舞いに来たときにも「お母さんがぎりぎりここまでおなかで育ててくれたから、赤ちゃんが元気に育っている。お母さんはとても頑張ってくれた」と説明することを意識しているそうだ。
NICUに入院中は搾乳した母乳を届けてもらう。自分で飲めない赤ちゃんには、口や鼻から管を入れて母乳を注入する経口もしくは経鼻哺乳を行うのだが、母親が母乳を持ってきたときには、目の前でチューブに母乳を入れて、飲む姿を見せるようにしている。
それは「お母さんの母乳で育っていることを実感してほしいから」(和田先生)だ。チューブからとはいえ、わが子が母乳を飲む姿を見ることで、子どもへの愛情が深まり、退院後の育児に前向きになれる人が多いという。
出産前から予定日より早く生まれそうなことがわかっていたり、病気があることがわかったりしているケースでは、出産後の赤ちゃんがどういう状態になることが予想されるか、どういう治療が必要なのかなどについて、出産前に説明を受けることができる「プレネイタルビジット(出産前児童保健指導)」という制度がある。
「NICUに入る新生児は出産直後に多くのスタッフに取り囲まれ、さまざまな処置を施されます。その様子を横で見ているお母さんに『不安にならないで』というのは無理な話。プレネイタルビジットで出産後の流れを漠然とでも理解していただくことで、不安や心配の軽減につながればと考えています。ご両親が希望される場合に行うことが多いですが、経過を知っておいてほしい場合にはこちらから提案することもあります」(和田先生)
NICUでの治療が終了し状態が安定した新生児は、退院に向けて経過観察を行うGCU(新生児回復治療室)へ移る。病院によっては、退院前に両親が赤ちゃんと一緒に入院し、ケアの仕方などを医師や看護師に教わりながら、退院後の生活を疑似体験するファミリールームをGCUに設けていることがある。