「役所に直接行かなければならない手続きもあり、思った以上に時間がかかります」
5月に母親を亡くした50代の男性はこう漏らす。男性は普段、海外で暮らしている。母親は、数年前に父親が亡くなって以降、中部地方の実家で一人暮らし。年金のほか、父親が残したアパートの家賃収入が生活の柱だった。日本には姉もいるが、結婚後は実家を離れ、ずっと首都圏に住んでいる。
「母親が亡くなった後にすぐに実家に駆けつけようとしましたが、帰国後2週間の待機期間もあって、葬儀には立ち会えませんでした。葬儀は姉夫婦が取り仕切ってくれましたが、姉にも仕事や家族の都合があり、実家に長くはいられません。私が日本にいるうちに、実家やアパートの処分や相続の片をつけたいと考えているようですが、必要な書類集めや手続きなどやることは多い」
20日には沖縄を除く9都道府県の緊急事態宣言が解除され、感染拡大に歯止めをかけるためのワクチンの接種も進む。しかし、接種のスピードは自治体によってばらつきがあり、10都道府県への「まん延防止等重点措置」も続き、警戒は怠れない。
それでも、「待った」がきかないのが死後の手続きだ。感染のリスクを抑えるためにも、もう一度おさらいしておこう。
親などの家族が亡くなると、最初にやらなければならないのが死亡届と火葬許可申請書の提出だ。死亡後7日以内に、亡くなった場所か故人の本籍地、あるいは届け出る人の住む市区町村役場に出さなければならない。
まず、死亡届と1枚つづりになっている死亡診断書や死体検案書の手配が必要だ。病院や自宅で亡くなった場合、死亡を確認した医師に頼んで死亡診断書をつくってもらう。
役所への申請後にもらえる火葬許可証は、火葬場に提出する。火葬が終わったら担当者から埋葬許可証を受け取る。この埋葬許可証は、寺院や霊園などに納骨する際に必要だ。
相続コーディネーターで相続支援事業「夢相続」の曽根恵子代表は「こうした手続きは葬儀会社が代行してくれるので葬儀社に頼むといいでしょう」と話す。