「でも、この作品に出演したことで、悩みからも解放された気がした。撮影後に久しぶりに踊ったときは、『こんなにも自由に楽しく踊れたのは、何年ぶりだろう』という気さえした。僕を現場で温かく迎え、支えてくれた人々の存在が大きい」

 今年5月には、オーストラリアのシンガーSia(シーア)のプロモーションビデオの監督も務めた。私生活のパートナーであるフィギュアスケート選手のエレーナ・イリニフに「一緒にやってみない?」と声を掛けられたことがきっかけだった。

■積極的に挑戦したい

「いつも頭の中にいろいろなアイデアがあるのだけれど、自分の考えだけだとどうしても固まってしまうし、それが他者にとって本当に面白いものかどうかはわからない。だからこそ、人から『やってみない?』と声を掛けられたら積極的に参加するようにしている。自分が引き受けなければ他の人がやるだけだし、だったら他の人が手を挙げる前に挑戦してみたい。そんなふうに考えるタイプなんだ」

 6月頭にはダンサーとして単独日本公演が予定されていたが、緊急事態宣言により中止になった。コロナ禍は一人のダンサーとしてつらい日々ではないか。そう尋ねると、「意外にも悪くない」と、少しだけ頬を緩めた。

「息子が生まれて、エレーナと二人で子育てをしながら、特別な時間を過ごしている。本当に、日々新たな学びを得ているような感覚だ」

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2021年6月28日号

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